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【プロ向け解説】残価設定型住宅ローンは新築市場の起爆剤となるか?「超断熱×残価設定」が切り開く住宅販売の未来

目次

 1.住宅販売の「ゲームチェンジ」が始まる:残価設定型ローンの正体 

2.【シミュレーション比較】通常ローン vs 残価設定型ローン

3.まとめ:性能×金融のセット提案で未来を創る

1.住宅販売の「ゲームチェンジ」が始まる:残価設定型ローンの正体


現在、日本の住宅市場は大きな転換期にあります。ウッドショック以降の資材高騰、そして人件費の上昇により、新築住宅の平均価格は上昇の一途を辿っています。特に都市部近郊では、一次取得層である20代〜30代の世帯年収に対して、物件価格が乖離し始めているのが実情です。
こうした状況下で、工務店様が「価格」を理由に成約を逃さないための切り札として注目されているのが「残価設定型住宅ローン」です。
これは自動車ローンでは一般的となっている仕組みで、住宅の数十年後の資産価値(残価)をあらかじめ設定し、その額を差し引いた金額を分割返済するものです。工務店様にとって、これは単なる金融商品ではなく、「購入ハードルを劇的に下げる販売戦略」となります

2.【シミュレーション比較】通常ローン vs 残価設定型ローン


実際に、具体的な借入条件をもとに、通常の35年ローンと残価設定型ローンでどれほどの差が出るかを比較してみましょう。
借入・返済条件の前提
借入総額: 6,000万円
金利: 1.0%(全期間固定想定)
ボーナス払い: 年2回(各10万円 / 年間20万円)


① 通常の住宅ローン(35年均等払い)
月々支払額: 約15.4万円(ボーナス分を除いた月額)
ボーナス月加算: 10万円
年間住居費: 約205万円(月換算で約17.1万円)
多くの若年世帯にとって、月々17万円を超える支払いは、将来への不安や現在の生活水準の低下を招く「重い壁」となります。


② 残価設定型住宅ローン(20年+15年)
今回のシミュレーションでは、「20年後に20%(1,200万円)の残価を残す」という設定で算出します。
20年目までの返済: 6,000万円から残価1,200万円を差し引いた「4,800万円」をベースに、20年間の元利均等返済(ボーナス併用)を行います。
月々支払額: 約11.9万円
ボーナス月加算: 10万円
年間住居費: 約163万円(月換算で約13.6万円)


比較の結論:新築購入に拍車はかかるか?
通常ローンと比較して、月々の支払額は約3.5万円軽減されます。この差は非常に大きく、これまでは「家を建てるなら教育費を諦める」「趣味を断つ」といった極端な選択を迫られていた層に対し、「今の生活水準を維持したまま、理想の新築を持てる」という夢を提示できるようになります。
20年という区切りは、子育てが終わるタイミングや定年を意識し始める時期とも重なります。20年後に「残価を一括で払う」「残りの15年で再ローンを組む」「家を売却して住み替える」という柔軟な選択肢を持てることは、不確実な時代において強力なセールスポイントとなり、新築住宅の購入に大きな拍車をかけることは間違いありません。

「残価」を支えるのは、家の「性能」である
ここで工務店様が施主様に強調すべきは、「なぜ20年後も20%の価値が残るのか」という根拠です。金融機関が残価を保証し、再ローンを認めるためには、その住宅が長期にわたって資産価値を維持していることが大前提となります。
ここで重要になるのが、「高断熱・高気密」な家づくり(UA値0.46以下など)です。
断熱性能がもたらす「二重の経済性」
ランニングコストの削減(月々の経済性) 一般的な平成28年基準の住宅と、UA値0.46(HEAT20 G2レベル)以下の高断熱住宅では、光熱費に劇的な差が出ます。
一般的な住宅: 冬場の暖房費がかさみ、年間光熱費が30万円を超えるケースも少なくありません。
高断熱住宅: 少ないエネルギーで全館の温度を一定に保てるため、年間で約10万円〜15万円程度の光熱費削減が見込まれます。
残価設定ローンで抑えた月3.5万円の返済額に加え、光熱費を月1万円削減できれば、実質的な可処分所得は毎月4.5万円増える計算になります。これこそが、高断熱住宅が実現する「真の経済性」です。
建物価値の維持(将来の資産性) 2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、住宅の省エネ基準は段階的に引き上げられています。今、最低限の基準で建てた家は、20年後には「時代遅れの寒い家」となり、市場価値が著しく低下するリスクがあります。 逆に、UA値0.46以下をクリアしている住宅は、20年後も「高性能な既存住宅」として高く評価され、残価を上回る価格での売却すら期待できるようになります。

工務店様が今、取り組むべき提案の形
本記事の結論として、残価設定型住宅ローンは「高断熱」という付加価値をセットにすることで、最強の営業ツールへと進化します。
実務的なアドバイス
なお、弊社(株式会社HAMAYA)は住宅ローンの直接的な取り扱いを行っておりません。そのため、具体的なローンの適用条件や、残価設定型ローンの商品詳細については、貴社が普段お付き合いのある各金融機関へ最新の取り扱い状況を確認いただくようお願いいたします。
金融機関によって、残価設定を認めるための条件(長期優良住宅の認定など)が異なるため、工務店様から金融機関へ「UA値0.46以上の高断熱住宅を建てる場合の優遇措置」などを相談されることをお勧めします。

3.まとめ:性能×金融のセット提案で未来を創る


「安く建てる」のではなく、「月々の負担を抑えながら、価値の高い(性能の良い)家を持つ」。 残価設定型住宅ローンと高断熱性能を組み合わせることで、工務店様は施主様に対して「一生涯の経済的な安心」を提供できるようになります。
これは、今の厳しい市場環境において、競合他社と圧倒的な差別化を図るための正解の一つと言えるでしょう。

HAMAYA マーケティング部 小尾
HAMAYA マーケティング部 小尾

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