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法改正! 嵐の後の静けさか、それとも反撃の狼煙か?

法改正! 嵐の後の静けさか、それとも反撃の狼煙か?

目次

        1、4月~8月末:法改正がもたらした着工の停滞

        2、混乱の核心:法改正による確認申請

        3、法改正後の予測:希望の兆しと今後への期待

        4、まとめ:法改正後の未来へ向けて

 

1、 4月〜8月末:法改正がもたらした着工の停滞

2025年4月1日、建築基準法が改正され、それまで確認申請が不要だった一部の小規模木造住宅(いわゆる「4号建築物」)にも、
構造計算や省エネルギー性能の審査が義務付けられました。この変更は、業界に大きな混乱をもたらしました。

  • 新築木造分譲住宅:
    4号建築物が主流である分譲住宅は、法改正の影響を最も大きく受けました。
    新しい審査基準に適合するための設計変更や、それに伴う申請手続きの煩雑化により、多くのプロジェクトが一時的に停滞。
    4月から7月にかけては、前年比で大幅な着工件数の減少が見られました。しかし、8月に入ると、審査機関側も徐々に
    新しい基準に慣れ、申請の滞留が解消され始めたことで、下げ止まりの兆候が見え始めました。

  • 新築木造注文住宅:
    注文住宅は、一軒ごとに異なる設計が必要なため、個別の審査に時間がかかり、特に影響が深刻でした。
    施主は着工時期が見通せず、不安を抱えるケースも多発。設計事務所も、複数の案件が同時に停滞し、
    業務がパンク状態に陥りました。8月末にかけても、確認申請の審査期間は依然として長く、
    着工件数の回復は緩やかなペースに留まっています。

  • 新築ビル:
    新築ビルは、もともと詳細な構造計算や防火区画の審査が必須であったため、法改正による影響は比較的限定的でした。
    オフィスや商業施設に対する安定した需要に支えられ、4月から8月にかけても、堅調な推移を続けています。


2、混乱の核心:法改正による確認申請

今回の法改正が引き起こした混乱の核心は、まさに確認申請にありました。

  • 審査期間の長期化:
    建築確認を行う指定確認検査機関や特定行政庁には、これまでとは比較にならないほどの申請が殺到しました。
    特に、構造や省エネ性能に関する審査は専門的な知識を要するため、1件あたりの審査期間が大幅に長期化。
    通常1ヶ月程度で済む申請が、3ヶ月、4ヶ月と延びるケースも珍しくありませんでした。

  • 設計業務の停滞:
    審査が長期化することで、設計事務所は新たな案件の設計に着手できず、業務の回転率が低下しました。
    また、構造計算や省エネ計算を外部の専門家へ依頼する費用も増加し、業界全体のコスト増にもつながりました。

  • 人材不足の顕在化:
    建築業界は以前から設計者や施工管理技士の人手不足が課題でした。今回の法改正は、この問題をさらに深刻化させ、
    業務負荷の増大が離職につながる懸念も生じています。

この混乱は、業界全体に「働き方改革」と「デジタル化」の必要性を改めて突きつけました。

3、改正後の予測:希望の兆しと今後の期待

秋が深まり、スポーツのクライマックスが近づくように、建築業界もここから反転攻勢に出ると予測されます。
2026年春に向けて、着工件数は再び増加に転じ、業界全体が「大盛り上がり」を迎える可能性は十分にあります。

  • 体制の整備と効率化:
    審査機関側も、新たな審査基準に対応するための人員配置や業務フローを確立しつつあります。
    また、多くの設計事務所も、法改正に対応した設計マニュアルや、効率的な申請手続きのための社内体制を構築しています。

  • デジタル化の加速:
    国土交通省が推進するBIM(Building Information Modeling)を活用した確認申請の本格導入は、
    申請手続きのデジタル化を一気に進める起爆剤となるでしょう。3Dモデルで設計から施工、維持管理までを一元管理することで、
    設計の精度が向上し、書類作成の手間が大幅に削減されます。これにより、審査期間の短縮とミスの削減が期待されます。

  • 需要の積み残し:
    法改正後に着工を延期していた案件や、審査の遅れで計画が停滞していた案件が、一気に動き出すことが予想されます。
    特に、年末から2026年春にかけて、住宅購入を検討していた層が動き出し、着工件数が急増する可能性があります。

この秋から年末にかけて、建築業界は遅れていた案件の着工ラッシュを迎え、来春には着工棟数も平準化することになるでしょう。

4、法改正後の未来へ向けて

今回の法改正は、建築業界に一時的な混乱をもたらしましたが、これは、より安全で質の高い建築物を供給するための「産みの苦しみ」と捉えることができます。日本の建築は、この困難を乗り越えることで、さらに進化していくはずです。

  • 質の向上: 厳格な審査基準は、住宅の耐震性や省エネルギー性能を底上げし、国民の安全と生活の質の向上に貢献します。

  • 技術革新の促進: 建築業界は、今回の経験を通じて、デジタル技術や新たな工法の導入を加速させるでしょう。

  • 新しい働き方: 業務の効率化は、長時間労働の是正にもつながり、業界全体の魅力を高めることに貢献します。

スポーツのクライマックスが、チームの団結力と選手の努力の結晶であるように、建築業界の「大盛り上がり」もまた、関係者全員の努力の賜物です。この秋、建築業界もまた、新たなスタートラインに立ち、未来へと向かって力強く歩み始めることでしょう。


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