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「レッドオーシャン」を生き抜く工務店の仕事術:競争から抜け出す「バズる」戦略とは

「レッドオーシャン」を生き抜く工務店の仕事術:競争から抜け出す「バズる」戦略とは


「ラーメン屋と工務店、どっちが多い?」

この問いかけから始まった私たちの対話は、単なるクイズではなく、日本の建設業界、特に地域に根ざした工務店が直面する厳しい現実を浮き彫りにしました。ラーメン屋の数も多いですが、個人事業主を含む工務店の数はそれ以上に膨大です。紹介や口コミに頼る従来のやり方だけでは、もはや仕事を得ることが難しくなっています。

インターネットの普及は、集客の常識を大きく変えました。多くの工務店がホームページを作り、SNSアカウントを開設し、デジタルマーケティングに乗り出しました。しかし、これもすぐに「レッドオーシャン」、つまり激しい競争の場となりました。誰もが同じような情報を発信する中、「どうすれば選ばれるのか?」という問いは、多くの工務店経営者の頭を悩ませています。

このコラムでは、これまでの議論を踏まえ、デジタルとアナログの両面から、競争から一歩抜け出し、顧客に「刺さる」マーケティング戦略を掘り下げていきます。

1. デジタルマーケティングの進化形:共感と体験を生み出す

ホームページやSNSの活用は、もはや「やるべきこと」のリストに入っています。しかし、そこで止まってしまっては、他社との差別化は生まれません。重要なのは、ただ情報を発信するのではなく、顧客に「体験」と「共感」を提供することです。

(1)最新技術で「未来の住まい」を体感させる

現代の顧客は、完成した家を写真で見るだけでは満足しません。彼らが求めるのは、そこに住む自分の姿をリアルに想像できる体験です。

VR/ARで仮想内覧会を開催する

 顧客は自宅にいながら、VRゴーグルを装着して完成後の家をバーチャルで歩き回ることができます。壁の色や床材をAR機能で変更できるサービスを提供すれば、顧客は家づくりを「自分のこと」として捉え、ワクワクしながら検討を進められます。これは、単なる情報提供を超えた、強力な顧客体験です。

ドローンで工事の進捗を報告する

 工事現場は、顧客にとっては立ち入りにくい場所です。そこで、ドローンで定期的に空撮した動画をSNSやメールで共有します。普段は見られない上空からの映像は視覚的に面白く、工事の透明性を高めるだけでなく、SNSでの話題性も生み出します。

(2)「人」にフォーカスしたパーソナルブランディング

会社としてのブランドだけでなく、その家を「誰が作るのか」というの魅力に焦点を当てることで、顧客との心理的な距離を縮めます。

職人の日常をドキュメンタリー風に発信する

 YouTubeやInstagramのリール機能を使って、職人が真剣に作業する姿、技術へのこだわり、休憩中の何気ない会話などを短編動画で発信します。家づくりに対する真摯な姿勢が伝われば、顧客は「この人たちになら任せられる」と信頼感を抱きます。

社長がインフルエンサーになる

 社長自らがSNSで家づくりのノウハウや業界の裏話を発信し、フォロワーからの質問に答えることで、専門性と親しみやすさを両立させます。社長の熱意や人柄が伝われば、顧客は「この人と一緒に家を建てたい」という強い動機を持つようになります。

2. アナログ戦略の再構築:リアルな関係性を築く

デジタルが「点」で多くの人に情報を届ける一方、アナログ戦略は「」で地域に深く浸透し、揺るぎない信頼関係を築くことができます。

(1)OB顧客を「ファン」に変える

新規顧客獲得も大切ですが、それ以上に重要なのが、既存の顧客(OB顧客)との関係を深めることです。OB顧客は、あなたの工務店の最大の応援団であり、最高の営業マンです。

「住まいのかかりつけ医」になる

 定期的な点検やメンテナンスサービスを無料または低価格で提供します。ただの点検ではなく、世間話や暮らしの小さな悩みに耳を傾けることで、「家を建てて終わり」ではない、長期的なパートナーとしての関係性を築きます。

コミュニティイベントを開催する

 OB顧客限定の餅つき大会やBBQ、DIYワークショップなどを定期的に開催します。顧客同士の交流が生まれることで、「〇〇工務店で建ててよかった」という共通の喜びが生まれ、自然と口コミや紹介につながります。

(2)「現場」を最高のショールームにする

完成見学会は一般的ですが、工事中の現場そのものをマーケティングの場として活用します。

工事中の現場看板を工夫する

 会社のロゴや連絡先だけでなく、家づくりのこだわりポイントや完成予定日を記載した、目を引くデザインの看板を設置します。近隣住民に「どんな家ができるんだろう?」と興味を持ってもらうことが目的です。

「構造見学会」を開催する

 壁や天井が張られる前の、家の骨組みや断熱材が見える状態で見学会を開きます。普段は見えない部分の丁寧な仕事ぶりや、耐震・断熱へのこだわりを直接アピールすることで、技術力の高さを証明できます。

3. 「バズる」ための最終戦略:圧倒的なストーリー

最後に、これらすべての戦略を束ねるのが、あなたの工務店だけのストーリーです。

なぜ家づくりをしているのか? どんな家づくりにこだわっているのか? どんな顧客を幸せにしたいのか?

このストーリーが明確であれば、発信する情報に一貫性が生まれ、顧客はあなたの工務店が単なる「家を建てる会社」ではなく、「自分の理想の暮らしを共に創り上げてくれるパートナー」だと認識するようになります。

デジタルとアナログを融合させ、顧客に「体験」と「共感」を提供し、あなたの「ストーリー」を伝え続けること。これこそが、激しい競争の中で、あなたの工務店が「選ばれる」存在になるための、最強の武器となるでしょう。


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