「ナフサの輸入調達量は、従来の85%まで回復した」

春先、メディアやSNSを賑わせたこの見出し。
当時は住宅設備や配管、断熱材、塗料などの供給が止まり、「明日届く現場資材がない」という深刻なパニックが業界を襲いました。

あれから数ヶ月が経過した本日2026年9月15日現在、市場のフェーズは完全に変化しています。
先読みのスペシャリストとして結論から申し上げます。

春先のような「資材が入ってこない」「物理的に現場がストップする」という絶望的な供給難は、すでに完全に脱しております。

しかし、だからといって現場が安泰かといえば、答えはNOです。

今私たちが直面しているのは、物不足の解消と引き換えにやってきた
「止まらない原材料高騰と、相次ぐ製品価格への転嫁(値上げラッシュ)」という、より根深い戦いです。

今後も世界情勢によっては、値上げの予兆は留まることを知りません。
建築資材流通の最前線に立つ我々株式会社HAMAYAが、イエメン最新情勢も交えて「これからの現場のリアル」を解き明かします。

「モノがある」背景――
メーカー各社が魅せた執念の調達シフト

なぜ、春先の破滅的な物不足を脱することができたのか。
その裏側には、日本の建材メーカーや化学サプライヤー各社による、執念の「調達ルート変更」がありました。

中東情勢の緊迫化に伴い、従来の中東産原油や国内製油所からのナフサ供給が目詰まりを起こした際、各社は即座に従来のルートを捨て、北米や東南アジアなどの他国ルートからの独自調達へ舵を切りました。

中東産とは成分構成が異なる他国ナフサから、建築に必要な化学成分(副産物)を抽出・調整するため、製造現場の技術陣は配合プロセスの緊急再構築を連日敢行。この凄まじい企業努力と代替調達の成功こそが、春先のパニックを抑え込み、今日の「資材供給の安定」を成し遂げた最大の勝因です。

しかし、この調達シフトは「高コスト構造への恒久的な移行」という大きな代償を伴うものでした。

イエメン情勢の緊迫と
「価格高止まり」の二重苦

春先の危機を脱した一方で、現在現場を苦しめているのが
「資材は入るが、価格が異常に高く、さらに上がり続けている」
という問題です。

この背景には、直近の中東・イエメン情勢が深く関係しています。

01

直近のイエメン(フーシ派)による要衝掌握と物流遮断

直近9月に入り、イエメンの親イラン反政府勢力フーシ派が紅海の要衝であるバブ・エル・マンデブ海峡やモカを実質的に制圧・影響下に置くという事態が発生しています。
これにより、本来期待されていた中東ルートの完全正常化は遠のき、世界中の商船やタンカーはアフリカ大陸南端(喜望峰回り)への遠回りを余儀なくされています。

02

「他国ルート高値買い」×「海上運賃・保険料暴騰」の直撃

中東以外の代替ルート(北米等)からの高値買い付けに加え、このイエメン情勢に起因する航海日数の増加(+約10日〜2週間)、戦時リスク保険料の跳ね上がり、そして歴史的な円安傾向がダブル・トリプルで直撃しています。

結果として、原油・ナフサの国際価格が一服したように見えても、「日本に届いた時点での原価(円建て調達コスト)」は過去最高水準から下がらないという構造が完成してしまいました。
メーカー各社も自社の企業努力だけではコストを吸収しきれず、秋以降も価格転嫁(値上げ)を継続せざるを得ないのが実情です。

品目別の供給・価格リアルステータス

実際のデータや皆様からのヒアリングをもとに、現在の品目ごとの供給状況と価格動向のリアルを分類しました。

資材分類

供給のリアルステータス

価格動向・転嫁の現状

現場への影響度

接着剤
コーキング・パテ

メーカーの代替調達により入荷ルートは完全に確保。物不足感は解消。

大幅な値上げ実施・進行中
他国ナフサからの副産物抽出コストが最も直撃。値上げが継続。

🔴 価格高騰が深刻

塩ビ管・配管部材

供給自体はスムーズ。
大手メーカーの生産ラインも安定稼働。

12%〜20%規模の値上げ
塩化ビニル樹脂原価および輸送費上昇分が価格へ転嫁。

🔴 予算圧迫が深刻

サッシ・樹脂建材

LIXILやYKK AP等の住設・サッシ大手は
通常納期に回復。

10%〜15%前後の値上げ
塩ビ樹脂・アルミ地金・工場電気代の高騰が出荷価格へ反映。

🟡 見積直しが必要

断熱材
(ボード系
グラスウール)

供給バランスは安定化。
手配の遅延や欠品はほぼ収束。

15%〜40%超規模の値上げ
フィルム・発泡樹脂原価の高止まりを背景に順次価格改定。

🟡 仕様・予算再考

これからの現場の戦い――
「物不足対策」から「価格転嫁・予算マネジメント」へ

春先まで私たちが直面していた課題は、
「いかに資材を確保し、現場を止めないか」でした。

しかし、今日現在の課題は「相次ぐ値上げラッシュの中で、いかに予算を管理し、適正な利益を守るか」へと完全にシフトしています。

「価格が下がるのを待つ」戦略は厳禁

「中東が落ち着けば、資材価格も元に戻るのではないか」と期待して契約や発注を先延ばしにするのは、非常に危険な賭けです。
今後も世界情勢によっては値上げの予兆は留まることを知らず、イエメン情勢や他国ルート調達の定着により、現在の高値水準は当面の「新しい定価(標準)」として固定化されています。

早期見積もりと施主様への丁寧な合意形成

着工直前になってからの「資材値上げによる予算オーバー」は、お施主様とのトラブルの最大の原因になります。
過去の掛率(かけりつ)をそのまま適用せず、最新の仕入れ価格改定を反映させた適正価格での早期合意形成こそが、工務店様・ビルダー様の経営を守る絶対条件となります。

まとめ:価格高騰の波を乗り越え
工務店の適正利益を守る仕入れ戦略

2026年9月現在の建築資材市場は、春先の「物不足パニック」を脱した一方で、他国調達コストの上昇やイエメン情勢に伴う海上物流の増大により、「第二次価格転嫁」という新たな局面を迎えています。

  • 資材供給は回復傾向にあるが、高コストな調達構造へ移行している

  • イエメン情勢等の影響で輸送費・保険料が高止まりし、国内の仕入原価は下がりにくい

  • 今後も世界情勢によっては値上げの予兆は留まることを知らず、過去の掛率に頼らない最新単価での早期見積もりとお施主様との合意形成が必要

  • 仕入先の一括化や納期管理の徹底により、事務負荷と手配リスクを低減する

価格の変動が激しい時代だからこそ、単なる資材の手配にとどまらず、正確な納期情報や中立な比較提案を提供できる調達パートナーの存在が不可欠です。
市場の動向を正しく把握し、適切な予算マネジメントと調達体制の構築を進めていきましょう。

HAMAYA マーケティング部 小尾
HAMAYA マーケティング部 小尾
2001年に株式会社HAMAYAへ入社後、24年以上にわたり住宅流通の営業・マネジメントに携わる。現場営業時代では個人年間最高売上9億円を達成し、赤字支店を6年間で黒字化へと導く。その後、本社課長や第三営業部部長を歴任。西東京・北関東・特販など複数支店の支店長(一部兼任)を務め、現場の組織改革と業績拡大を牽引した。2025年よりマーケティング部 部長として、商圏の拡大とWebビジネスの立ち上げを指揮。現在は工務店様向けにメルマガやコラムを通じて実効性の高いノウハウを発信中。

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